2011-01-01から1年間の記事一覧

煩悩

今年も無事、大晦日を迎えた。残念ながら我が家からは聞こえないが、毎年、この日に突かれる除夜の鐘は、それにより煩悩を振り払い、身を清めて新年を迎えるという意味があるという。鐘を突くだけで煩悩が消え去るのであればこれほど楽なことはないが、昔の…

叱ること、叱られること

最近、職場で叱る人が少なくなった気がする。私が社会人一年目のときの上司は厳しい人で、よく叱られた思い出があるが、同期と話していても叱られている人が多かったように思う。私が入省する以前には、決裁を破り捨てたとか、紙ヒコーキにして飛ばしたとか…

公務員バッシング

先日、久しぶりに地元の病院の内科を受診した。小児科や耳鼻科にはよく子どもを連れて行くので、内科が混雑しているのはある程度予想していたが、実際に行ってみると予想以上にひどかった。朝一番で行ったのに既にロビーは高齢者でごった返しており、話がう…

負担増に見合った給付

先日、「税と社会保障の一体改革」の厚生労働省案が公表された。見直しの対象は、医療、年金、介護、福祉、就労支援と多岐にわたっている。もっとも、個別に内容を見ていくと、「引き続き検討」という項目が多く、今後、関係者や与党との調整が本格化してい…

わくわくすること

最近、わくわくすることが少なくなった気がする。夏の人事異動で就いた今の仕事が、完全な調整役のポストで、(そういう仕事も誰かがやらなければならないから仕方ないにしても)達成感に乏しいということが最大の原因だと思う。わくわくが少なくなると目が…

フォームを守る

先週末、全国の職場単位のチームで対戦する将棋大会(職団戦)があった。1チーム5人で422チームが参加(つまり、2000人以上の将棋好きが集合)するという大規模な大会で、会場となった東京体育館には、見渡す限り将棋盤が並べられ、壮観な眺めだった。私は…

モダンタイムス

「モダンタイムス」(伊坂幸太郎著、講談社文庫)を読んだ。ある意味で伊坂幸太郎らしく「ない」、メッセージ性の強い作品だった。 小説なので解釈はいろいろあると思うが、私が受け取ったメッセージは、「誰が世の中を動かしているか分からない怖さ」、「よ…

当事者であること

社会人になって2,3年目のことだったか、学生時代の友人と飲む機会があり、私の所属する役所を含む公務員改革の話になったことがあった。当然、話の方向としては、お役所仕事がどうにかならないのか、とか、癒着があるのではないか、といった、今の体制は…

上を向いて歩こう

先日、首が強烈な寝違え状態になり、ひどい目にあった。首に少しでも力を入れると、電気が走ったような痛みを感じる。首を動かせないのはもちろん、いったん横になると、起き上がるのも難儀した(首に力を入れずに起き上がるのは至難の業だ。)。 整形外科の…

1000年に一度の星空

中学生か高校生のときだったか、こんな文章を読んだことがある。 「もし星空が1000年に一度しか現れなかったら、みんな有り難がって見るだろう。でも、星空は毎日現れるから、みんな空を見上げることはない。それなら、せっかくの美しい星空も、存在していな…

本を捨てる

本が捨てられない。結末が分かったミステリーなど、今さら読み返す可能性はほとんどゼロに近いが、それでも、本をゴミ箱に入れるのは抵抗がある。大げさに言うと、本を捨てるのは、文化に対する冒涜のように感じる。だから、後で読むかもしれない、と思って…

エレベーターとリベラリズム

少し前になるが、役所のエレベーターが新しくなった。6台のエレベーターが、地下1階から地上11階までの計12フロアを運行している。 このエレベーターには、最新の運行システムが搭載されているようで、ときどき不思議な動きをする。時間帯からすると空いて…

政と官②

前回は、政と官それぞれの得意分野、不得意分野について検討した。今回は、具体例を挙げつつ、役割分担のあり方についてさらに考えていきたい。 具体例として、東日本大震災への対応を挙げたい。 東日本大震災の発災後、役所は文字通り夜を徹して対応に当た…

政と官①

前回は、厚生労働省分割論を皮切りに、政と官の役割分担についてどう考えるかという問題を提起した。それを受けて、今回は、政と官について考えていきたい。 政と官の役割分担を考えるにあたり、まず、それぞれの得意分野、不得意分野について考えてみたい。…

厚生労働省分割論

少し前になるが、舛添大臣のころ、厚生労働省を分割すべきではないか、という議論が出たことがあった。当時の舛添大臣がどの程度本気であったのかは分からないが、厚生労働省は大きすぎるので、年金部分と、労働部分と、医療などの残りの部分の三つに分ける…

すべからく醒めつつ淫すべし

「すべからく醒めつつ淫すべし」という言葉がある。大学受験のときに習った言葉だ。ところが、その意味が分からない。意味が分からないのに、不思議と言葉だけは覚えている。今、ネットで調べてみても、過去の東大の入試問題でその言葉を含む文章が出ていた…

安全意識の低下

最近、安全意識の低下を感じさせる事件が相次いでいる。石川県では、誕生日を迎える夫婦が、自ら掘った深さ2.5メートルの落とし穴に落ちて窒息死した。天竜川の川下りのボート転覆事故では、多くの乗客がライフジャケットを着用していなかったという。また、…

秘書官という仕事

今回は、私がこれまで約一年にわたって務めた秘書官という仕事について触れてみたい。若干手前味噌になるがご容赦いただきたい。 秘書というと、偉い人の日程管理をする人というイメージがあるかもしれない。もちろん日程調整もするが、私がしていた仕事は、…

もし好きな本で野球チームを作ったら

しばらくカタい話が続いたので、今回は、好きな本の話でも書こうと思う。ただ好きな本の紹介をしても面白くないので、ちょっと趣向をこらして、好きな本で野球チームを作ってみたい。これを読んでいただいている方も、自分の趣味にあわせて、音楽編とか、映…

社会保障の道徳的基礎④

これまで、社会保障の道徳的基礎について述べてきた。最後に、今、改めて道徳的基礎を考える必要性について触れた上で、若干の補足とまとめをしたい。 従来、日本の福祉の大きな担い手は、「家族」と「企業」であった。 高度成長期において、地方から多くの…

社会保障の道徳的基礎③

前々回、前回と、これまで2回にわたって社会保障の道徳的基礎について考えてきた。社会保障の道徳的基礎を、ロールズ的な社会契約に置くことにより、社会保障の負担は単なる助け合いの精神から、社会契約上の義務として積極的に位置づけられることになる、…

社会保障の道徳的基礎②

前回は、社会保障の道徳的基礎が、従来は相互扶助と社会連帯に位置づけられていたこと、そして、社会経済情勢の変化によってこうした基盤が揺らいでいること、その上で、新しい道徳的基礎として、社会契約に基づく社会保障という考え方を提案した。 今回は、…

社会保障の道徳的基礎①

最近、政府は、社会保障の費用をまかなうために、2010年代半ばまでに消費税率を10%まで引き上げる、という決定を行った。今後、少子高齢化がますます進んで、年金や医療、介護といった社会保障のための費用が増えるから、増税が必要なのだ、という理屈は分か…

なでしこジャパン優勝に寄せて

なでしこジャパンがワールドカップで優勝した。リードされても決してあきらめず、2度も追いついて、最後はPK戦で勝ったのにはとても感動した。素人目に見ても、アメリカは日本よりも格上だったように思う。その相手にリードされて、もうだめか、でもよく戦…

名利に使はれて

「名利に使はれて、閑かなる暇なく、一生を苦しむるこそ、愚かなれ。」 ―――「徒然草」第三十八段高校生のときにいろいろな古典を勉強した。もちろん受験のためであるが、そのときに諳んじていた内容が、実は今の考え方に結構影響を与えているのではないかと…

公務員に求められるもの

先月末、国家Ⅰ種の官庁訪問が行われた。私も、臨時面接官として、業務の合間をぬって10人余りの学生と面接した。真剣な眼差しで質問に答えてくる学生と話していると、自分が官庁訪問をしていたときのことを思い出す。初心忘るべからず、というが、自分自身が…

日本の統治機構の特徴〜参議院不要論に思う〜②

前回は、参議院不要論をきっかけに、日本の統治機構が、保守的に設計されていることについて記した。今回は、国の意思決定プロセスが保守的な思想の下に設計されている理由について、さらに考えていきたい。 統治のツールとして最も典型的かつ実効力があるも…

日本の統治機構の特徴〜参議院不要論に思う〜①

「第二院は何の役に立つのか、もしそれが第一院に一致するならば、無用であり、もしそれに反対するならば、有害である」 ―――フランス革命の指導者 アベ・シェイエスのことば 参議院不要論を目にすることが多い。特に政権交代後、衆議院と参議院の多数政党が…

総理をモチアップする

アメリカに留学していた際、大統領が支援者に囲まれて演説をしている姿を、テレビでよく目にした。大統領が演台に立ち、その周りを熱烈な支援者が埋め尽くす。中には、”We love OBAMA”などのプラカードを持った支援者もいる。そして、大統領が何か言うたびに…

アメリカ人は倫理がお好き

7年前、アメリカの大学院に留学する機会があり、公共政策学を学んだ。その際思ったことは、倫理を扱う講義が多いな、ということである。どんな授業を取っても、だいたい一回は、”ethics”, “moral”, “integrity” といったテーマの講義がある。例えば、ある授…