上を向いて歩こう

 先日、首が強烈な寝違え状態になり、ひどい目にあった。首に少しでも力を入れると、電気が走ったような痛みを感じる。首を動かせないのはもちろん、いったん横になると、起き上がるのも難儀した(首に力を入れずに起き上がるのは至難の業だ。)。
  整形外科の弟に電話するも、「手にしびれがなければ大丈夫だから、放っておくしかないね」とつれない返事。結局、一週間ほどで快方に向かったが、整体の先生からは、いつも下を向いて背中が丸まっているので、首と背中の筋肉に負担がかかっていますね、とのこと。

  言われてみれば、秘書官をするようになってから、妻に、姿勢が悪くなった、とよく言われた。「三歩下がってその影を踏まず」とは秘書の心得の一つであるが、目立たないように、少しうつむき加減で歩くようにしているうちに、いつの間にか、姿勢自体が悪くなっていたようだ。先日、政治家の秘書の方と飲む機会があってその話をしたら、分かる分かる、と笑っていたから、一種の職業病といえるかもしれない。特に、僕はもともと、人より顔(頭)が大きい(アメリカにいるときは、服はSサイズだったが、帽子だけはLサイズだった)ので、姿勢を悪くしているうちに、負担がついに限度を超えたということなのだろう。

  「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しい」という説がある。つまり、仮に楽しくなかったとしても、笑うことによって脳が錯覚して、楽しいと感じるということだ。現に、みんなで声を出して笑いましょう、という療法があるらしい。
  それと同じことが姿勢についても言えるのではないだろうか。いつも下を向いていれば、自然と気持ちが落ち込んでくる。笑う門には福来たる、ということわざがあるが、上を向いて歩けば、気分も少しは明るくなるかもしれない。

 考えてみると、子どもはいつも上を見ている。背が低いので当たり前といえば当たり前だが、両親の顔や目、洗面台やキッチンなど、常に上を向いて日常生活をしている。そのことが、子どもの心身の健やかな成長に一役買っているのかもしれない。下から見上げてくる子どもににっこりされると、こちらまで明るい気分になる。
  子どもを見習って、上を向いて歩こう