新・働き方を見直す6 〜余暇について〜

前回紹介したように、プロテスタンティズムが余暇のあり方を宗教的倫理から制約していたとすると、(ウェーバーのいうように)そうした宗教的な制約が失われた現代社会においては、余暇のあり方が重要であり、そこに現代の働き方を見直すヒントがある。 なぜ…

新・働き方を見直す5 〜働くこと=金儲け?〜

少し前になるが、ネットニュースで気になる記事があった。 大阪府内の小学校4年生男子に、将来の夢について聞いた調査結果である。 記事で、「子どもたちの声の要約」が紹介されている。――「有名なユーチューバーは1億円以上稼いでいる。もうあくせく勉強…

新・働き方を見直す4 〜働き方のビジョン その3〜

(前回からの続き) 「ここ一番」の期間の子育てをどうするか。まずは、夫婦で分担するのが基本だろう。「ここ一番」の期間を夫婦でうまくずらすこと、つまり、夫が「ここ一番」のときには妻が育児(・家事)をし、妻が「ここ一番」のときには夫が育児(・家…

新・働き方を見直す3 〜働き方のビジョン その2〜

前回に引き続き、「働き方のビジョン」についてもう少し考えてみたい。 前回紹介したサイボウズのような働き方のコースを労働者が選べるようになったとしたら、我々はどんなコースを選ぶだろうか。当然、それぞれのコースによって給与はどうなるのか、昇進や…

新・働き方を見直す2 〜働き方のビジョン その1〜

働き方の見直しについての政策論に入る前に、我々がどういう働き方をしたいと思っているのか、あるいは、どういう働き方が望ましいと考えるのか、という「働き方のビジョン」について考えたい。 働き方が多様化している、と言われて久しいが、そうした中で、…

新・働き方を見直す1 〜働くことの意味を問う〜

働き方をどう見直していくか、これまで、このブログでも数回にわたり議論してきたが、「働き方の見直し」が大きな政策課題となっている今、改めて働き方の見直しについて考えてみたい。 働き方の見直しを議論するに当たって、まず、働くということの意味につ…

Bitter memories about Korean

「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録に関して、日韓の歴史認識の差が話題になっているが、私も韓国についてはほろ苦い思い出がある。もう10年以上前のことだ。 学生の頃、私は国際交流のサークル(国際的な学生団体)に所属していて、同じ学生団体のソ…

流れに棹さす

タイムトラベル物の映画や小説によくあるパターンに、過去にタイムスリップした主人公が歴史を変えようとするけれども、「歴史の修正力」のせいで、一時的に変わったように見えても結局元に戻ってしまう、というものがある。例えば、悲惨な飛行機事故が起こ…

制約を知る

相手のある仕事をしていると、相手が思うように動いてくれずにイライラすることがある。利害がガチンコでぶつかる場合はともかく、基本的には同じ方向を向いているはずなのに、意見が対立して、お互いに相手が悪いと非難しあうようなことになるのはなぜだろ…

3.11の思い出

あの地震が起きたとき、私は参議院本館の3階にある控え室にいた。ちょうど、参議院の決算特別委員会が開かれており、政務官の秘書官をしていた私は、随行者用の控え室で国会中継を見ながら待機していた。 揺れがおさまって、控え室から委員会室に入ろうとす…

書評 〜「ひとの発達と地域生活慣行−循環・持続する発達環境を−」(山岸治男(2012)、近代文藝社)〜

地域での祭りや行事などの地域社会の生活慣行(地域生活慣行)が、ひとの発達にどんな影響を及ぼすのか−−本書は、ひとの発達における地域生活慣行の重要性や、そうした慣行が廃れつつある中で、子どもたちの健やかな育ちを確保するために、何が必要なのかに…

時代の半歩先へ

行政として、法律や制度を改正して社会を変えたいと思うとき、時代の半歩先を目指すことが必要だと思う。ゼロ歩では意味がないし、一歩先では進みすぎて実現が難しいからだ。 私がかつて担当した育児・介護休業法の改正。3歳までの子を持つ労働者に対して短…

自助と自立

少し前になるが、京極高宣先生の講演を聞く機会があった。京極先生は、厚労省の審議会の座長や、国立社会保障・人口問題研究所の所長などを歴任された、福祉分野の大家である。 先生の講演の中で特に印象に残ったのが、「自助」と「自立」の違い、ということ…

児童福祉の現場から⑧ 〜児童虐待の防止〜

全国で悲惨な児童虐待事案が後を絶たない。児童虐待を防ぐため、行政でもさまざまな取り組みをしているが、児童虐待の多くは密室化した家庭で起こることもあって、これを完全に防ぐことはなかなか難しい。 虐待防止の難しさにはいろいろな側面があるが、今回…

児童福祉の現場から⑦ 〜社会的養護の世界〜

「社会的養護」という言葉をご存じだろうか。 「社会的養護」とは、虐待や病気などの理由で保護者に育てさせることが適当でない子どもや、死別、失踪などで保護者のいない子どもに対して、公的な責任として社会的に養護を行うことをいう。 こうした社会的養…

児童福祉の現場から⑥ 〜保育所 vs. 幼稚園〜

以下は、保育所ステレオタイプ保育士(「保」)と幼稚園ステレオタイプ教諭(「幼」)との会話。 保:幼稚園の先生は気楽でいいよね。仕事は2時までで、夏休みもあるし。 幼:最近は預かり保育で夕方まで預かってるし、夏休み中も園を開けてるよ(※1)。そ…

児童福祉の現場から⑤ 〜保育ニーズの把握〜

前回、待機児童数の数え方が自治体によってまちまちであることや、その結果として保育ニーズの把握が的確に行われていないのではないか、という点について述べた。 今回は、その保育ニーズの把握が、新しい制度の中で今後どのようになっていくのかという見通…

児童福祉の現場から④ 〜待機児童の数え方〜

前回、厚生労働省による「待機児童」の定義や、その「待機児童」と実態(実感)としての「待機児童」の差がなぜ生じるのか、といった点について書いた。 今回は、実際に自治体で待機児童をどのように数えているか、ということについて書いてみたい。 このブ…

児童福祉の現場から③ 〜待機児童のナゾ〜

毎年、この時期になると新聞の紙面を賑わすのが待機児童問題だ。今年は、待機児童ゼロを目標にする横浜市の取り組みが話題になった。 「横浜市の林文子市長(66)が公約に掲げている「保育所の待機児童ゼロ」が目前に迫っている。平成22年4月には全国の…

児童福祉の現場から② 〜子育て今昔〜

前回、最近になって虐待の相談対応件数が増えているということを書いたが、では、今と昔を比べると、今は、昔に比べて子育てが大変になったのだろうか。 ミルクをあげたり、オムツを替えたりという子育ての行為それ自体は、今も昔も変わらない(むしろ、調乳…

児童福祉の現場から① 〜子育ての大変さ〜

大分県では、24時間365日、いつでも子育てに関する相談をフリーダイヤルで受け付ける「いつでも子育てほっとライン」という電話相談を実施している。そうした電話に寄せられる相談内容を見ていると、いかに子育てに悩み、苦労している親が多いかということに…

不思議な感慨

ジョギングを走り出すと、わずか5キロの距離でも、先の道のりを考えて、まだこんなにあるのか、といつもうんざりする。でも、そんなことを考えつつ走っていくうちに、いつの間にか半分が過ぎ、気づけばゴールまであと少し、というところまで来ている。どん…

自律性

最近、自律性についてよく考える。きっかけは、デシの「人を伸ばす力−内発と自律のすすめ」という本を読んだことだ。県庁に赴任して管理職になったことや、3歳になる息子と過ごす時間が増えたことも、要因の一つかもしれない。 自律性とは、他人から「させら…

メンドクサイ病

「面倒くさい」は役人の大敵だ。ふとした隙に心に入り込んでくる風邪のようなものだが、放っておくと重篤化して、死に至る病になる。 行政は、「事なかれ主義」、「減点主義」などと言われる。確かに行政には、何か新しいことをして非難されたり、仕事を増や…

ソーシャル・キャピタル

先日、祖父の13回忌があり、久しぶりに親族で集まる機会があった。祖父・祖母には子ども(私の母の代)が3人おり、さらにそこから3人ほどの子ども(私の代)が産まれ、さらにそこから子ども(私の子の代)が産まれている。それぞれの配偶者を含めれば、20…

決められない政治

いよいよ衆議院が解散され、来月には総選挙を迎える。選挙になると、政治に関する報道も多くなるが、最近読んだ「ヒーローを待っていても世界は変わらない」(湯浅誠著、朝日新聞出版)に大きな刺激を受けた。既にフェイスブックなどでは話題になっているが…

仕事ができる人

先日、あるインド料理屋に行ったときのこと。 私「「本日のカレー」は何ですか?」 店員「えーと、何だったっけな・・・確か、ほうれん草のカレーだったか・・・」 私「(「本日のカレー」の中身くらい覚えておけよと思いつつ)まあいいです、じゃ、「本日の…

去年と一緒です

早いもので社会人になってから13年を数えるようになり、資料の原案を作る立場から、最近では出来上がった資料をチェックすることが多くなった。はじめて係長になり、「係員が作成した文書に手を入れるのって新鮮だよね−」などとのんきに同期で話していたこ…

助けを求める力

私は人に助けを求めるのが得意なほうではない。特に、あまりよく知らない人にお願いをするのが苦手だ。例えば、スーパーに行って目当ての商品が見つからないとき、店員に聞くことはまずない。自分で探しても見つからないときは、店員に聞くよりも、ほかの店…

支援を行き届かせるために

この4月から県庁で働くようになって、早いものでもう半年が過ぎようとしている。これまで現場を回っていろいろなことを感じてきたが、その中でももっとも強く感じていることが、支援が必要であるのに、必要な支援が行き届いていない人がいかに多いかという…