助けを求める力

 私は人に助けを求めるのが得意なほうではない。特に、あまりよく知らない人にお願いをするのが苦手だ。例えば、スーパーに行って目当ての商品が見つからないとき、店員に聞くことはまずない。自分で探しても見つからないときは、店員に聞くよりも、ほかの店で買おうと思ってしまう。レストランで、頼んだ料理がなかなか来ないときも、「まだですか?」と聞くことはあまりない。知らない街で、人に道を尋ねた経験もほとんどない。

 前回のエントリーで、必要な支援が行き届いていないケースがいかに多いか、そして、支援を行き届かせるために行政として何が必要かについて書いた。しかし一方で、支援を受ける側から考えてみると、人に助けを求める力というのも、大切な能力の一つではないかと思う。

 先日、ある講演の中で、人に助けを求められない家庭こそ、注意が必要であるという話を聞いた。特に、高学歴であったり、保育士など専門資格を持つ親の場合、自分の手に余る状況になっても、周囲に相談することができず、問題を抱え込みやすいという。学歴と助けを求める力との関係は必ずしも明らかでないが、問題解決能力が高い人ほど、それまで自分の力で問題を解決してきた経験が多いだけに、いざというときに周囲に助けを求めることが難しいということかもしれない。

 子育ての現場を回っていると、地域の子育て支援拠点や保育所、児童館、あるいは児童相談所といったさまざまな場所で、支援をしようと待ち構えている熱心な人たちがたくさんいる。だから、何も自分で解決できないような大きな問題でなくても、気軽に、そうした人たちに支援を求めて構わないのだと思う。実際、日頃感じている子育てのストレスをちょっと聞いてもらうだけで、ずいぶん心が軽くなったという話を聞くことも多い。家族の人数が減り、地域のつながりが薄れる中で、子育てに孤立感を感じる人がとても多くなっている。自分だけで問題を抱え込まず、周囲に助けを求める力というのは、家庭や地域での問題解決能力が低下しつつあるだけに、ますます重要になっていると思う。