怖がり

 もうすぐ3歳になるうちの息子はとても怖がりで、暗いところはもちろん、虫や花火、雷、高いところなど、およそ人が怖がりそうなものは何でも「怖い」といってしがみついてくる。かわいいなあと思う反面、さすがに最近は、男の子なのにあんまり怖がりなのもどうかと思って、「怖くないでしょう」と言ったり、「どこが怖いの?」と聞いたりして、少し鍛えようかなどと思ったりしていた。

 しかし振り返ってみると、私自身も結構な怖がりだったような気がする。私には2つ年下のいとこがいるのだが、そのいとこは、しょっちゅう迷子になったり、高いところから飛び降りて怪我をしたりしていて、子ども心に、「よく怖くないなあ」と思っていた。私はといえば、特に暗いところが苦手で、小学校からの帰り道、最寄りのバス停から自宅までの暗い道のりを、いつも後ろを振り返りながら歩いていたのを覚えている。

 だから、息子の怖がりは私譲りかな、などと考えていたところ、先日、興味深い話を聞いた。ネグレクト(育児放棄)されていた子どもは、暗いところを怖がらず、真っ暗な道でも平気でどんどん歩いていってしまうらしい。それは、きちんと養育されていないせいで、自分にとって安全な場所が分からないから、何が危険かということが分からず、したがって怖いと言う感情も生じないからではないか、ということだった。つまり、怖いという感情は、身の危険を感じるところから生ずるのであるが、そもそも安全という感覚がなければ、危険という感覚もなく、したがって、安全な居場所のないネグレクトされた子どもにとっては、怖いという感情が起きないということだ。言われてみれば、確かに怖いという感情は、身の危険と結びついていて、だからこそ大人になると、暗がりを怖いと感じることもなくなるのだろう。

 そんなことを考えていくと、息子が怖がりなのも無理に鍛える必要はなく、息子が「怖い」と言ってきたらしっかり抱きしめてあげて、息子にとって一番安全な場所は父親の腕の中であると、ここぞとばかりに感じさせてあげれば良いのかなと、最近では思っている。