食事の大切さ

 映画「隣る人」を見た。この映画は、埼玉県にある児童養護施設の8年間のドキュメンタリー映画である。解説やナレーションなどは一切無く、施設で暮らす子どもたちの毎日の生活が、たんたんと描かれている。地味ながら、子どもたちと施設職員とのふれあいや、実親との葛藤などが丁寧に描かれていて、映画が終わったときには、そこかしこですすり泣く声が聞こえた。

 この映画は、炊事のシーンで始まり、炊事のシーンで終わる。食事がとても印象的な映画だ。心に傷を負い、何らかの理由で実親と暮らせない子どもたちが生活する児童養護施設において、みんなで一つのテーブルを囲んでする食事は、「家庭」を一番強く実感させてくれる瞬間ではないだろうか。実際、県内の児童養護施設を見学した際に伺ったところ、どの施設も、食事をどのようにするかについて、大変心を砕いているようだった。

 食事の大切さは、もちろん、児童養護施設に限らない。明治安田生活福祉研究所が今年6月に行った調査(「男性の幸せに関する意識調査」)によると、夫婦で一緒に夕食をとる頻度が高いほど、夫の幸せ度は高く、特に、週0日、週1日、週2日以上の間で差が顕著に出ているようだ(下図参照)。


 調査をみると、回答数で一番多いのが「7日」となっており、3割以上のカップルが毎日夕食をともにしていると答えている。次に多いのが「2日」で、これは週末だけ一緒に食べている、ということだろう。「7日」が一番多いというのは、共働き夫婦が増えている中で、ちょっと意外な気もするが、個人的には嬉しい結果だ。

 我が家でも、転勤になって職住近接になったため、夕食は、毎日家族そろってとることができるようになった。しかも、家の構造上、食卓がリビングルームと別になっているので、食事中はテレビが見られない。必然的に、家族が向き合って食事をとるようになり、そのときの機嫌や体調など、子どもたちの様子も良く分かるようになった。私が転勤して生活面での一番大きな変化といえば、この点かもしれない。やはり家族にとって、食事を一緒にするというのはとても重要な要素だと思う。