働き方を見直す④〜全国のイクメンよ、立ち上がれ〜

  厚生労働省は、男性の育児休業の取得率を、平成29年度までに10%とすることを目標としている。だが実績は、ここ数年1%台の取得率にとどまっており、目標達成にはほど遠い状況にある。
 正直言って、今年の男性の育休取得率には期待していた。「イクメン」が流行語になったりして、雰囲気も変わってきており、ひょっとしたら5%くらいまでいくのではないか、と甘い期待を抱いていた。だが、実際の数字は伸びていない(それどころか若干減少している。)。もっとも、育児休業ではなく配偶者出産休暇や有給休暇などにより、実質的に育休を取っている人も相当数いるのではないか、という説もある。そうはいっても、現実が変わっているのであれば、やはり法律上の育休取得率も増えていくはずで、この結果には、現実はそんなに甘くないということを改めて実感させられる(ちなみに、厚生労働省の男性の育休取得率は8.4%で、前年度の3.1%から大幅増。)。

  なぜ、男性の育休取得率は伸びないのか。そこにはもちろん、育児休業を取りにくいという職場の現状があると思う。だが、私は批判されるのを承知で敢えて言いたい。男性が本気で育児休業を取りたいと思っていないのではないか、と。
 確かに、男性が育児休業を取ろうと思ったら大変だ。まず職場に迷惑がかかる。上司に何と言われるか分からないし、そもそも言い出すタイミングがつかめない。周囲への根回しも面倒だ。そんなことを考えているうちに、子どもが産まれ、言い出せないままに終わってしまう。
  私も育児休業を1か月取ったので、その状況はすごくよく分かる。でも、と思う。本当にどうにもならないのか。本気で育休を取ろうと思えば、1か月くらいであれば、何とか調整できるのではないか。例えば、仕事の区切りのついたタイミングで取る。あるいは、お盆やお正月にあわせて取る。半年、1年となると厳しいと思うが、1か月なら、何とか取れるのではないか。

 1か月くらい育休を取ったところで、育児はまだまだ続くわけだし、それで一体何になるのか、という批判もあろう。それはその通りであると思う。でも、育休を取ることは、これからの働き方を、仕事から育児に少しシフトするということを、周囲だけでなく、自分自身に対して宣言することになる。いわば、自分自身のスイッチを入れるということだ。ファザーリング・ジャパンの安藤さんは、「子どもが産まれたら、自分のOSを入れ替えよう」と言っているが、育休を取ることは、“OSを入れ替える”良いきっかけになると思う。

  だからこそ、男性が本気で育児休業を取りたいと思えるように、子育ての素晴らしさが男性にもっと伝わってほしいと思う。国が、少子化対策のために男性の育休が必要です、と訴えるよりも、労働者が、より強く育休を取りたい、と訴えることで男性の育休取得を推進する方が、社会としても健全だろう。
 これまで、女性の社会進出が進んできたのは、女性の戦いの歴史でもあった。1985年に男女雇用機会均等法が制定されたときには、女性団体が旧労働省や国会議事堂を取り囲み、大変な熱気と興奮の中で、審議会や国会の議決がなされたという。女性がそうやって“労働”を勝ち取ってきたのなら、今度は男性が“子育て”を勝ち取る番だ。なぜなら、子育てをすることで一番メリットがあるのは、国でも社会でもなく、父親自身なのだから。
  子育てを女性だけに独占させておくのはもったいなさ過ぎる。―――全国のイクメンよ、立ち上がれ!―――(つづく)

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